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りんごMAGAZINE

【ココが変だよ!りんご音楽祭 vol.14】「できるだけ誰も取り残さない音楽を作りたい」出演アーティスト・奇妙礼太郎が語るりんご音楽祭

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。16年目となる今年は9月28日−29日に開催決定!

主催者のdj sleeperを中心に、運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていくpodcast「ココが変だよ!りんご音楽祭」。

第十四回のゲストは、2022年のりんご音楽祭にも出演し、りんごの常連アーティストである奇妙礼太郎さん。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、りんごの魅力を探ります。アーティスト目線で見るりんご音楽祭、コロナ前と後の変化、はたまた最近の奇妙さんの頭の中まで、じっくりお話を聞きました。

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※インタビューは2023年春に実施されました。

「瓦RECORD」がきっかけでりんご音楽祭に出演

長崎 今回は、りんご音楽祭に出演されているアーティストの方をゲストにお迎えしています。まずは自己紹介からお願いします。

奇妙さん 奇妙礼太郎です。よろしくお願いします。

長崎 今日は、出演アーティストの中でもりんご音楽祭との関わりが長い奇妙さんから見たりんご音楽祭について、じっくり聞いていきたいと思います。まず、奇妙さんがりんご音楽祭に出演されたきっかけは?

奇妙さん あんまりちゃんと覚えてないんですけど……。一番最初は、りんご音楽祭主催のsleeperくんに、松本で運営しているパーティーハウス「瓦RECORD」にライブで呼んでもらったのが一番最初ですね。もう10年以上前になります。

長崎 sleeperさんとは元々ご縁があったんですか?

奇妙さん いや、そのときに初めて会いました。あっちから、急にぱっと連絡があって。まずは「瓦RECORD」でライブをして、そこからりんご音楽祭にも出演するようになりました。

長崎 なるほど。「瓦RECORD」の方が先だったんですね。りんご音楽祭にはこれまでどれくらい出演していますか?

奇妙さん そうですね。毎年出ているわけでもないので、だいたい三〜四回ぐらいになるのかな。

長崎 奇妙さんは、2022年のりんご音楽祭に出演されていますが、コロナ前のりんごも知っていますよね。アーティスト目線でも、個人的な意見でも、コロナ後のりんごに対して率直な感想があればお聞かせください。

奇妙さん 体感的には、コロナ前と後で特に何か変わったっていう感じなかったです。うん、楽しかったですね。お客さんの雰囲気も、なんだかリラックスしたムードがありましたね。りんごに限らず、コロナが流行りだした初年度とか、2年目の頃は結構ピリピリした感じがあったんですよ。でも、最近はあんまりそういう空気はどこに行っても感じないですね。

長崎 りんご音楽祭もコロナ中はステージを縮小して開催していて、2022年はコロナ前に規模を戻しての一発目の年でした。運営側としては、どうなるんだろうという不安があったのですが、出演されたアーティストの方が、会場のリラックスした雰囲気を感じられたというのはうれしいですね。

りんご音楽祭といえば天気の良さ。お客さん同様にフェスを楽しむ場面も

長崎 奇妙さんは、りんご以外のフェスにもご出演されていますよね。他のフェスと比べたりんご音楽祭の特徴はありますか?りんごならではの何か魅力でも、逆にネガティブなポイントでも。

奇妙さん そうっすね、特にネガティブなことは感じないです。去年のりんごは天気がよくて気持ちよかったですね。りんごは毎年開催が九月の下旬ですし、暑くない。ちょっと涼しいぐらいで気持ち良かったなと。気候で言ったら、ベストやなと思いますね。

長崎 去年奇妙さんが出演されていたりんごステージは、森の中にひらけていて風通しも良くて気持ちいいですよね。奥の方だと木陰に座ってる人もいたりして。

奇妙さん そうですね、たまに、暑かったり日差しが強かったり、土砂降りみたいな過酷なフェスに出ると、客席を見ててお客さん大丈夫かなぁと思うよ。

長崎 悪天候は悪天候で、逆にいい思い出になるかもしれないですが、ステージ側からみてお客さんの状態は気になりますよね……。天気の気持ち良さ以外で、りんごに対するイメージは他にありますか?

奇妙さん うーん……。りんごっていうと、天気がいいイメージしかないな。

長崎 本当ですか。2022年のりんごは、初日は大雨だったんですよ。奇妙さんが出演された三日目はようやく快晴で、気持ちよく過ごせる日でした。

奇妙さん あぁ、そうやったんか。言われてみれば足元は結構ぬかるんでたなぁ。

長崎 りんご音楽祭の開催期間以外でも、松本や長野にいらっしゃることはありますか?

奇妙さん そうっすね。ちょいちょいライブなんかでお邪魔しています。

長崎 長野や、松本に来た際の過ごし方も教えていただきたいです。りんご音楽祭出演当日の前後はどういう過ごし方をされていたんですか?

奇妙さん そうですね。去年はだいぶ明るい時間に出演したので、自分のライブの後には結構会場を回りましたね。友達のアーティストも出演していたので一緒にご飯食べたり。カラオケスナックの出店もあったので、そこでも遊びました。

長崎 観に行ったアーティストはいますか?

奇妙さん 水曜日のカンパネラのステージを観にいきました。ちゃんと観に行ったステージはそれくらいかな。

長崎 なるほど。普通のお客さんと同じような楽しみ方をされていますね。

奇妙さん そうですね。結構長い時間、会場にいました。でも、翌日も予定があったから、暗くなる前には帰りましたね。

長崎 りんご音楽祭出演時は、松本の街では何をしますか?

奇妙さん 前に来たときは、松本の美術館とかにも行きましたね。

長崎 草間彌生さんの作品で有名ですよね。奇妙さんは、ライブとかで地方に行ったときは美術館に行ったり街を歩いたりと、ゆっくりしていくことも多いんですか?

奇妙さん そうですね。歩いて行ける範囲であれば、リハーサルと本番の間にちょっと足を運んでみることはあります。

野外音楽フェスでのセットリストの組み方って?

長崎 ここまでは、会場の雰囲気やりんごについて聞いてきましたが、僕が個人的に気になっていることがあって。りんごみたいなフェスの時って、どうやってセットリストを決めてるんですか?

奇妙さん フェスの時は大体、最近やってるレパートリーのリストを書き出した紙を足元に置いて、出演時間の間にそのリストを見ながら、どれからやろうかなって考えながら演奏していますね。飲み屋さんみたいな会場でライブをするときは、飲み屋さんっぽい歌を選んだり、温泉でやる時は温泉っぽい曲を選んだり……。会場の要素を入れながらっていう感じですかね。

長崎 当日の会場の反応とかを観て、歌う曲を選んだり順番を入れ替えることもあるんですか?

奇妙さん そうですね。特にフェスとかは、こちらが盛り上げなくても、お客さんがもう既に楽しい状態になっているというか、準備ができていて。もう会場の空気が出来上がっているから、演奏するだけでいい。ゼロから雰囲気を持っていくって感じがあんまりないんですよ。出演者がステージに出てくるだけで、ワーっと盛り上がるから、出演する方としても楽しいですね。

長崎 でも逆に、ライブイベントと違ってフェスのお客さんは全員が全員奇妙さんをめがけてくるわけじゃないですよね。その点、違いはありますか?

奇妙さん あるんかぁ。あんまり考えてないです。客層の違いは別にそこまで意識していないです。むしろ、お客さんのパワーにつられる部分はありますね。なんか、お客さんが元気やとこっちも元気になる。

長崎 なるほどなぁ。奇妙さんは、歌ってるときは何を考えているんですか?

奇妙さん 歌っているときですか。調子が悪いときは、どういうふうにアプローチしたらマシになるかなとか考えながらやってる、かもしれないですね。音の感じが、狙ってる音と違うんやったら、どこが原因なんかなぁって考えなきゃいけない。

長崎 結構、細かいところまで気にするタイプなんですか?

奇妙さん そうですね。気になるときもありますね。照明眩しいなとか、椅子が低すぎるとか、高すぎるとか……。うん、いろいろありますね。

自分が放つ言葉の影響力について考えている

長崎 歌っている時のことをお聞きしましたが、奇妙さんが最近考えていることはありますか?音楽に関係ない話でもいいです。

奇妙さん 最近考えてることですか。なんかあるかなぁ。

長崎 はい。お話できる範囲で大丈夫なので。

奇妙さん ……打ち上げとか、みんなで喋ってるときとかに、みんな割とカジュアルに人の見た目の話をするよなぁ、と思います。

長崎 見た目の話ですか。

奇妙さん うん。たとえば、「最近太ってきたね」とか、みんな普通に口にしてるけど、それをすごい気にしてる人もおるのになぁって。なんでしょうね、そういう見た目の話って、なんか昔からある普通の話やけど、人に対して「みっともないですよ」って言ってることと同じやから、聞いてて「しんどいなぁ」と思うんですよ。でも、若い人と喋ってたら、あんまりみんなそういう話をしない。

長崎 若者は、あまり人の容姿を揶揄しないように感じるということですか?

奇妙さん はい。みんながみんなそうじゃないけど、変なコンプレックスみたいなのが全然ない。すごいかっこいいなと思いながら見ていますね。勉強になる。

長崎 そういう「最近太ったよね」みたいな一言って、言ってる側からしたら多分悪気がないんですよね。挨拶みたいになってしまっているというか、風習というか。

奇妙さん そうですよね。その友達同士のノリみたいに話していても、その隣に居合わせた隣の席の人が、実は自分の体型のことを気にしているかもしれないじゃないですか。今はどうかわからないけど、バンドマンって、昔は細い方がいいみたいな風潮があったし。内々で、「痩せた方がいいよ」みたいな話をしていても、痩せてない人って世の中にいっぱいいるし……。

パーフェクトは難しくても、誰も取り残さない曲作りを

長崎 自分が相手に対して言った言葉が、相手以外の人にも影響している可能性があるよっていう事ですよね。今の奇妙さんのお話を聞いていて思ったのですが、それこそ曲を書くって、とんでもない数の人に対してそれが起りますよね。自分の目の届かないところまで自分の言葉が届く、とんでもない影響がある。それが音楽の良さだとは思うんですが、その影響力に対して思うことはありますか?

奇妙さん そうですね。あんまり、「これを言いたい」とか、「これを歌いたい」みたいなのはないんです。でも逆に、「言いたくないこと」は結構あるんですよね。今喋っていたような体型のこともそうですけど、歌の中に出てくる人の肌の色とか、性別とか、限定した歌になってしまうと、それに当てはまらない人は「自分が入っていない」と感じてしまうから、あんまりそういうことはしたくないなと思います。

長崎 人を限定しないというか、誰も疎外感を感じないような曲作りをしているんですね。

奇妙さん ミュージックビデオとか、世の中の広告とか見てても、ほとんど若い男女の恋愛みたいなベースになってる。実際、若い男女の恋愛は世の中にたくさんあるやろうし、そういうコンテンツがあっていいんですけど、それ以外のものも全然見たいですよね。歳がいくつの人も恋愛をしているし、そもそも恋愛をしていなくてもいい。いろいろあんのになぁと思いますね。パーフェクトはなかなか難しいですけど、できるだけ誰も避けたりしないようにするのがいいなぁと今は思っています。

長崎 ありがとうございます。ここまで、りんごの話から脱線した話まで、たくさん奇妙さんのお話が聞けてありがたかったです。最後に、今年もりんご音楽祭が開催されるわけですが、今年のりんごに関してでも、音楽に関してでも、何か抱負があれば教えていただきたいです。

奇妙さん そうですね。みんなが安全に音楽を楽しめる状況があって、フェスを作っている人たちがいて、りんご音楽祭というフェスが今年も行われて……、地球上に、そういうことができる場所ってそんなにないですよね。そしてそれが続いていくのはものすごいことなので、ずっと続いていけばいいなと僕は思っています。なんか、すごいことしてるなって思いますよ、りんごは。だから、また関わることができたら嬉しいですし、もっとそういうことが増える世の中になっていくように、僕も生きていこうと思います。

長崎 奇妙さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。またりんごのステージでお会いできることを楽しみにしています!

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