りんごMAGAZINE

【わたしたちのりんご音楽祭】人がたくさんいると、僕の居場所がない気がしてさびしくなるんです

人がたくさんいると、僕の居場所がない気がしてさびしくなるんです

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人がたくさんいるところにはなるべく行きたくない僕だけど

僕が音楽を始めたのは小学6年生の時です。母がギターを買ってくれて、そこから部屋で一人で演奏するようになりました。中高は軽音部がなかったし、誘える人もいなかったのでバンドが組めなくて、大学に進学してから音楽系のサークルに入ってやっとバンドを組めるようになったんです。

最初のバンドはいつの間にか空中分解しちゃったんですが、3年前に後輩が「バンドやりましょうよ」って声をかけてくれてまたバンドを組んで、松本にあるgive me little more.で初めてレコーディングをしました。今も活動は続けていて、昨日もバンドの練習をしてきたところなんです。

自分がライブをするし、ライブハウスならよく行くんですが、フェスは……。フェスっていうか、人がたくさんいて「わ〜〜」ってなってるところあんまり行きたくないんです、僕。でも、去年はりんごに七尾旅人さんっていう大好きなアーティストがでるってきいて、せっかく長野にいるし一回くらいはライブに行ってみたいなぁと思って、初めて行きました。

広い場所では音楽に浸れなかったけれど、居心地のいい場所を見つけた

自転車で、ヒイヒイいいながら坂を登って会場まで行きました。普段ほとんど外に出ないから、あんな丘の上に会場があるなんて知らなかったんです。いざ中に入ったら、「人がたくさんいるぞ!うわぁ〜……」ってなりました。でも、その日はほんとにいい天気で、人はたくさんいるけど、これはいい空間だなぁって思えましたね。

中尾憲太郎、水曜日のカンパネラ……、それから、お世話になってる先輩のバンド、コスモス鉄道、TANGING GUN。give me little more関係のステージは全部見ました。会場着いてすぐ、とりあえずりんごステージに行ったんですけどなんだかしっくり来なくて。それからわさびステージとかきのこステージとか小さいステージに行ってみたら居心地がよかったです。僕は普段、部屋にこもってギター弾いて歌うのが楽しいので、広いところで音楽を聴くモードになりきれなくて。

一瞬でも、一秒でも、「あぁ、ここにいてよかった」と思ってもらえるステージを僕も作りたい

でも、七尾旅人さんは一番大きいりんごステージでの演奏だったのに、本当に落ち着いて聴けました。七尾旅人さんが歌って、その音が僕に届くまでの振動。会場のちょっと湿った空気、林の間の風、夕日の色が全部混ざって濁る感じすら、音楽の一部になっていて、ものすごく特異な感触がありました。僕にとっての、七尾さんの歌詞だったりメロディーが、そのままアルプス公園の自然の風景に接続されたような。あれは、ほんとにあの場あの瞬間じゃないと成し得ない音楽でした。一番ふさわしいものを、一番ふさわしい場所で聴いている気分になれました。

僕、ほんとに外に出たくなくて。ましてやお金を払ってまで、人がたくさんいるところに行きたくないんです。たくさん人がいるのに、僕の居場所がなくて、僕以外が全員楽しそうな気がする。さびしくなるんですよ。でも、七尾さんのステージでは、それが忘れられた。「あぁ、りんごにきてよかった」って思えたのは七尾さんのおかげです。僕がライブをするときも、絶対に誰にもさみしい想いをさせない、って気持ちでライブをしているんです。一瞬でも、一秒でも、「あぁ、ここにいてよかった」って思ってもらいたいです。

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