りんごMAGAZINE

【ココが変だよ!りんご音楽祭】「参加者それぞれの全力で楽しむ気持ちが、りんご音楽祭の空気を作っている」協賛を超えた、レッドブルとりんご音楽祭の関わり方

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。15年目となる今年は9月23日−24日に開催決定!

主催者のdj sleeperを中心に、運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていくpodcast「ココが変だよ!りんご音楽祭」。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、りんごの魅力を探ります。

第十二回のゲストは、りんご音楽祭実行委員会の水野智大さん。水野さんは、昨年までレッドブルジャパンの担当者としてりんご音楽祭に関わっていました。一協賛企業を超えた、レッドブルとりんご音楽祭の親和性と関わり方について聞きました。

りんご音楽祭とレッドブルの親和性は、「全力で楽しむ気持ち」

長崎 では、まずは自己紹介をお願いします。

水野さん 水野です。去年までは、レッドブルジャパンの一員としてりんご音楽祭に携わる側でしたが、今年から独立し、正式にりんご音楽祭実行委員の仲間に入ることになりました。これから他のメンバーと一緒にりんご音楽祭を盛り上げていきたいなと思っています。

長崎 りんご音楽祭との関わり自体は結構長いんですか?

水野さん そうですね。自分でもうろ覚えで申し訳ないんですが、2016年か2017年から、持ちつ持たれつみたいな感じでお世話になっていました。

長崎 これまでは、具体的にどういう関わり方をしていたんですか?

水野さん 今まではレッドブルの担当者としてりんご音楽祭に携わっていました。DJの機材を載せた、レッドブルのDJカーを一つのステージとして運営したり、ドリンクメーカーとしての販売だったり、諸々のマーケティング活動を担当窓口として行なっていました。

長崎 去年のりんご音楽祭では、おやきステージのテントもレッドブルのものでしたよね?僕、最初はあれがレッドブルEVVOステージだと勘違いしちゃっていました。

水野さん そうですよね。去年のりんご音楽祭に行かれた方は、みんな長崎さんと同じ勘違いをしたんじゃないかな(笑)。あのテントは、基本的にはああいった使い方はあんまり推奨はしていないんです。ただ、海外ではテントをライブステージとして使う事例があるにはあるので、主催のsleeperさんからりんごでも使ってみたいと相談をもらい、使用したんです。

長崎 DJカーや、ああいったテントは普段どういう用途で使われているんですか?

水野さん レッドブルのイベントは、スポーツ関係のものや音楽イベントが多いんです。DJカーは、あれ1台で音が出せるので、雪山のスノーボードのイベントなどで使用することが多いです。おやきステージで使ったテントは、スポーツイベントでの選手の待機所や、ドリンクを販売する際の雨対策として使用することがほとんどですね。りんご音楽祭のように、テント自体をステージとして使用するのは日本では珍しいと思います。

長崎 そもそもの疑問なんですが……、レッドブルってドリンクメーカーじゃないですか。どうして、DJカーを持っていたり、フェスのステージを作ったりするんですか?

水野さん いい質問ですね。レッドブルって、商品のキャラクター性に対して、マーケティングをすることがすごく多いんです。他のドリンクメーカーさんって、例えば清涼飲料水やお酒などいろんなドリンクを扱っていると思うんですが、レッドブルって、商品としてはエナジードリンク一本だけですよね。

長崎 たしかに。

水野さん 音楽イベントやフェスなど、「全力で楽しみたい!」って人が多いイベントと、エナジードリンクであるレッドブルは親和性がとても高いんです。だから、イベントの中でドリンクの販売を行うだけでなく、一緒に「作る側」になって盛り上げていこうという姿勢は、他のメーカーさんより強いんだと思います。

長崎 そうですよね。ただ飲み物を売っているだけのメーカーではない感じがします。りんご音楽祭のお客さんの反応や空気感は、他のイベントと比べてどうですか?

水野さん りんご音楽祭のオフィシャルフォトギャラリーを見てもらうとわかるんですが、みんな自然とレッドブルを持っているんですよね。来ているお客さんも、りんご楽祭とレッドブルはいつも何か一緒にやっているな、とわかってくださっているんじゃないのかなと僕は思っています。

長崎 ちゃんと認知されてるんだ!

水野さん はい。なので、他の企業が、「自分たちもりんご音楽祭と一緒になにかやりたい」と言っても、なかなかああいう絵にはなりづらいのかなと。自分がこういうふうに言うのもすごくおこがましいんですけど、りんご音楽祭のお客さんはレッドブルがどういうことをしているのかもちゃんと見てもらってるのかなと思っています。

フェス主催者の顔が見えて、距離が近いことがりんご音楽祭の特徴であり魅力

長崎 水野さんは、りんご音楽祭以外にもいろんなイベントに関わってきたんですが?

水野さん レッドブルでは、首都圏と中信越のマーケティング担当をしていました。スポーツイベント、音楽やダンスのイベントなど、外部の人と一緒に動いたり、社内でレッドブルのイベントをやるときは、制作側に入ったりしていましたね。レッドブルのことを知ってもらったり、実際に飲んでもらってエナジードリンクというものを体感してもらったり……。あとは、フェスなどの我々がターゲットとしているお客さんがいるところで、レッドブルのことをより好きになってもらえるようなコンテンツを作っていく仕事をしていました。

長崎 今まで、いろんなイベントや現場に関わってこられた上で、水野さんの中ではりんご音楽祭と他のイベントにはどんな違いがありましたか?

水野さん そうですね。他のフェスとりんご音楽祭の一番違うところは、主催者の顔が見えて、かつ距離がすごく近いところかなと思っています。大規模なフェスにメーカーが協賛で入る形はよくあるんですが、商業的な部分が多いのかなと思っていて。それはそれでビジネスが成り立っているので僕は別に否定するつもりはないんです。でも、りんご音楽祭に関しては、その距離が近い分、「スポンサー枠として入ります、協賛金数百万円出します」なんて話じゃなくて、お互いにりんご音楽祭を盛り上げていきたいという気持ちで動いているのかなと。

長崎 水野さんとしても、その方が動きやすいですか?

水野さん 動きやすかったし、やりたいことがやれました。その代わり、負担も倍増しますけど(笑)。でも、仕事量は増える反面、やりたいことはやれるし、素直に話をして、それをちゃんと聞き入れてもらえる。お互いに気持ちよく動けるのは、やっぱり関わっていて楽しいですね。

運営サイドも全力で楽しんでいるがゆえに発生した「やらかし」と、それをカバーできる体制

長崎 なるほどなぁ。僕も、このPodcastを通じていろんな人に話を聞いてきましたが、主催者との距離の近さについては、皆さん言っていることが共通している気がします。主催のsleeperさん自身が最終日にはDJとしてステージに立っていたり、普段からパーティーに出演していたり、見える距離にいるのが大きいのかもしれないですね。距離が近いからこそ言える意見を聞きたいのですが、運営スタッフとして、去年のりんご音楽祭はいかがでしたか?

水野さん 去年のりんごですか。……正直に言うと、3日は長すぎるよ!って言いたいですね。

長崎 そうですそうです、そういう話をいっぱい聞きたいです(笑)。

水野さん ようやくコロナが明けるし、自粛期間中に制限してやってたのを解放するという意味合いもあって、sleeperさんが「相当気合入れてやるんでよろしく!」みたいな感じでやっていったのはいいけど、これはスタッフが大変だなぁと。

長崎 やっぱり、二日間開催と三日間開催では全然違いますか?

水野さん いやぁ、大変でしたよ。しかも去年は初日がすごい雨でしたよね。「よし頑張るぞ!」っていう気持ちも折れるし、これが残り二日も続くんかいみたいな部分があって。自粛期間にステージを縮小していたところから、倍の規模にした上で、かつ三日間の開催。みんな、自粛期間に今までの体力が弱くなってるのに、通常の倍のことをやるのは結構、体には堪えましたね。なんとか気合いで乗り越えた感じがします。

長崎 舞台の裏側で起きていたやばいエピソードはありますか?

水野さん うーん。舞台チームに関しては、りんご音楽祭は他のイベントの現場よりフレンドリーなんです。みんな毎年同じステージを担当しているので、新しい人も入ってくるけれど、各ステージでどういったことをやればいいのかっていうのはだいたいわかっている人たちがいる。もうここ最近で言うと、無線で「あれどうなってる!?」って怒号が聞こえるってこともあんまりないですよね。ただ、去年はそういう慣れが逆に油断を生んだのか、一つ「やらかし」があって。

長崎 おぉ、話せる範囲でお話いただきたいです……!

水野さん りんご音楽祭のスタッフって、フェス当日は仕事だから、終わった後の「夜の部」にお疲れ様会みたいな感じで集まるんです。「今日の現場どうだった?」とか、「そっちのステージはどう?」みたいな話をしながらも、自分たちも楽しむ時間があるんですよ。去年は、それが勢い余っちゃって、とあるステージ担当の方が飲みすぎちゃったんです。それで最終日、大遅刻をしちゃって。もちろん、プロフェッショナル目線から考えると駄目な話なんですが、これもある意味りんごらしいというか。

長崎 運営スタッフとして働きつつ、りんご自体も全力で楽しんでいることの現れというか。

水野さん そうですね。仕事ではありつつ、ベースの部分はみんなしっかり楽しんでる。それに、りんごの現場には、なにかあったらそれをちゃんとリカバーしてくれる人がいるんですよ。スケジュール通りに進行できないのはお客さんに対して失礼なので、そこはみんなしっかりしています。フェス全体としては滞りなく進んでいるけれども、実は裏側でそういうふうにスタッフが楽しみすぎちゃって起きた「やらかし」がある。だけど、ちゃんとそれもリカバーできる体制ができてるんです。

長崎 なるほどなぁ。それもまたりんごらしさなんですね。水野さんはりんごの期間中はゆっくりフェス自体を楽しむ時間はあるんですか?

水野さん 今までは、やってたことが多岐に渡りすぎちゃって。ほぼ自分がレッドブルまわりを全部見ているような感じだったので、なかなか時間は取れなかったですね。でも最近は、自分が全部やるんじゃなくて、信頼のおけるチームメンバーたちにちゃんと仕事をちゃんと割り振りして、それを見ていく体制に変えました。僕は心配性なので、いろんなところが気になっちゃう部分はあるんですが、チームで動くようになってからは、忙しくないタイミングでシュッと抜けて、お目当てのアーティストや友達のアーティストのステージを観に行く余裕はできましたね。

参加者それぞれの「全力で楽しんでいこう!」という気持ちが重なって、相乗効果を生んでいる

長崎 改めて、水野さんが思うりんご音楽祭の魅力を教えていただきたいです。

水野さん 日中はアルプス公園の自然の中で音楽を楽しめて、夜は夜で松本の街を楽しめる。さらに松本の観光もできる。やっぱりそこが醍醐味かなと思っています。都市型フェスであり、かつ自然にも囲まれているフェスってなかなかないなと思うんです。それから、主催のsleeperさんが住んでいる土地で行われているフェスであることも大きいと思います。彼の周りで普段から街に関わっている人がフェスに関わっている。それがりんご音楽祭ならではの雰囲気というか、空気を作ってくれているんじゃないのかな。

長崎 「住んでいる街でやる」フェスだからこその空気感は、僕も関わっている上ですごく感じます。

水野さん あとは、運営側とお客さん、アーティストの距離感がものすごく近い。お客さんは、「フェスを楽しもう!」というマインドで来てるし、アーティストも、今までライブハウスやクラブとかでしかやっていなかったような若手の子が多いので、「自分の演奏が終わったらフェスを楽しもう!」という人がいっぱいいて、お客さんと一緒にフェスを楽しんでいる。運営側も、「みんなにフェスを楽しんでもらおう」という気持ちが強いし、「一年に一回のお祭りごとだから気合入れて楽しむ!」と思っている。その相乗効果がりんご音楽祭の雰囲気を作り出しているんじゃないのかな。

長崎 それぞれの「全力で楽しんでいこう!」という気持ちが重なって、りんご特有の雰囲気に。

水野さん そうそう。りんご音楽祭ならではのアットホームな感じは、やっぱりそういう各方面の人たちが同じマインドでりんご音楽祭に臨んでいるからこそ、出てくる雰囲気じゃないのかなと僕は思っています。

長崎 水野さん的に、そんなりんご音楽祭を楽しむコツはありますか?

水野さん 一言で言ってしまえば、体力を使い切るまで遊びきるのが一番いい楽しみ方だと思います。お酒を飲んだり、フードを食べながら会場を歩いて回って、「いいな」と思ったところに立ち寄る。そうやってホッピングしながら楽しむのがまず一つですね。お目当てのアーティスト以外のアーティストも、「あれ、いいな」と思ったら立ち寄るのもいいですね。去年は200組以上のアーティストが出てましたよね。出演するアーティストを全部知ってる人ってほとんどいないと思うんです。そういった予期せぬ出会いが多いので、そこも楽しめたらいいんじゃないかな。

長崎 ステージ数自体が多いのはもちろん、各ジャンルいろんな音楽が聞けるのはりんごの強みですよね。水野さんは、松本出身じゃないですよね。りんごの期間、松本ではどうやって遊んでいますか?

水野さん 運営側って、基本的にはお客さんよりも早く会場に入って、お客さんよりも遅く出ることが多いので、街に出る頃には閉まってるお店が多いんですよ。その時々で空いてるところを探して遊んでいますね。りんご期間以外でいうと、お蕎麦と温泉はマストですね。松本は美味しいお蕎麦屋さんがたくさんあるので、気分によってお店を探しています。温泉は、少し足を伸ばして浅間温泉に行くことが多いかな。毎年、りんごが全部終わった後に、そばと温泉で自分の心身を浄化させています。

長崎 蕎麦と温泉でパーティーのリフレッシュ、いいっすね!

水野さん いわゆる観光地に行くのももちろんいいと思いますけど、せっかく県外から松本にくるなら、個人店に行ってみてほしいですね。地元の人たちとも知り合って、その人たちからおすすめを教えてもらえるかもしれないし、りんご以外の期間にもまた遊びに来たくなるかもしれない。そうしたら、また次の年のりんごの楽しみ方っていうのが二、三倍に膨れ上がるんじゃないのかな。

アーティストとデュエットできちゃうかも?カラオケスナック

水野さん そうそう。あとは、僕個人的にはカラオケが激熱スポットだと思っています。まずフェスにカラオケがある時点でおかしい(笑)。

長崎 たしかに。チケットを買ってフェスに来ているのに、さらにお金を払って自分も歌うってめっちゃおもろいですよね。

水野さん あと、意外とアーティストの人がふらっと立ち寄ったりするので、たまに一般のお客さんとアーティストが一緒にカラオケできる機会があるんです。ちゃんと盛り上げるスタッフがいるから、歌うだけで気持ちいいのに、たまたま歌ってたタイミングでアーティスト本人が来て、デュエットできちゃったり、知らないお客さん同士でも、一緒に歌って仲良くなっちゃったりする。あそこは絶対おすすめですね。

長崎 カラオケの出店は、毎年誰がやっているんですか?

水野さん その時々によって違うんですよ。一概には言えないんですけれども、自分が記憶してる限りだと、沖縄のカラオケスナック「はるちゃん」っていうお店の出店ブースがきっかけだったと思います。

長崎 なるほど。それにしてもカラオケスナックがフェスに出店してる時点でだいぶ不思議ですね。

水野さん ね(笑)。それで、その年のカラオケでそれがすごい好評になっちゃって。運営スタッフの中で、「あそこ、どのステージより盛り上がってるらしいぞ」って噂になって。出店スタッフが盛り上げ上手なんですよね。すごく気持ちよく歌わせてくれる。音響設備も整っているし、フェスのお客さん食っちゃうぐらいの勢いで全力で盛り上げてくれるんですよ。

長崎 カラオケスナック、今年も要チェックですね。最後に、これからコアメンバーとしてりんごに関わっていく上で、水野さんの今年の抱負や、今後こういうことができたら面白そうだな、みたいな妄想があれば教えてください。

水野さん 自分がこれまでやってきた経験を生かして、お客さんにも、スポンサーの皆さんに対しても、「完璧」とは言えなくても、自分がいいと思えるフェスを作って、いい気持ちになってもらいたいです。あとは、実は自分はアメリカに留学経験があって。当時の友達が、アーティストのプロモーターをしていたりエージェントで働いていたりするので、日本のローカルなフェスに興味がある海外のアーティストをうまく招聘して、りんごならではのパフォーマンスが観られたらおもしろいだろうな。これはあくまでも僕の妄想ですけど、りんごにバチッとハマりそうな海外アーティストって結構いると思うんですよ。

長崎 それは結構夢がありますね。

水野さん ここ数年は、アジア圏のアーティストとかもりんごに出演するようになりましたし、アメリカだったりとかヨーロッパからりんごにも来てもいいんじゃないのかなと思っていて。バチっとりんごにハマるアーティストをうまく招聘して、お客さんにもアーティストにも楽しんでもらって、りんご音楽祭の厚みを増すことができたらいいなと思っています。

長崎 いやぁ、それは楽しみですね。水野さん、今日はありがとうございました!

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