りんごMAGAZINE

「歌ってないと死んじゃうやつの歌が聴きたい」りんご音楽祭主催者dj sleeperの原点・DJ MAMEZUKAさんと対談【後編】

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。

そもそも、「りんご音楽祭」って?他の音楽フェスと何が違うの?フェスのHow toとは?……etc主催者のdj sleeperを中心に、その他の運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていきます。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、「りんご音楽祭」の魅力を探ります。

今回は、そのりんご音楽祭を主催するdj sleeperがこのフェスを始めることになった原点とも言える存在であると語るDJ MAMEZUKAさんをゲストにお迎えしました。

会場に入った瞬間フルスイング!な「きのこステージ」

長崎:後編も引き続き、DJ MAMEZUKAさんをゲストにお迎えして「りんご音楽祭」について深掘りしていきます。

DJ MAMEZUKA:よろしくお願いします。

長崎:今年の「りんご音楽祭」は、例年とどう違うんですか?

sleeper:今年は、今までやっていないこともやろうとしていて。「きのこステージ」を丸ごと1日クラブやライブハウスとかのハコにプロデュースしてもらうんですよ。

長崎:「きのこステージ」って、そもそもどういう特徴があるステージなんですか?

sleeper:「きのこステージ」は、テントで囲まれていてね、雨が降っても平気なんだよ。中にはドリンカースタッフもいて。要は、「屋外クラブ」みたいな感じだね。

DJ MAMEZUKA:会場に入って、一番最初にあのステージがあるのがすごいよな。

sleeper:入り口に一番アングラな感じのものがあるんだよね。あそこいいっすよね。俺もすごい気に入ってる。結局ずっとあそこにいちゃうもん。

長崎:「きのこステージ」は何年前くらいから始まったんですか?

sleeper:えー……。たしかに、最初はああじゃなかったな。5年前くらいじゃない? よくあんなところであんなクラブみたいなステージ作れたよね(笑) 作ってみたら、「あ!いいじゃん」みたいな感じだったな。やってみないとわかんないからね。

長崎:なるほどなぁ。

sleeper:最初はあんな風にテントで囲われてなかったんですよ。一番最初にお客さんが見るステージだから、「ウェルカムステージ」として弾き語りとか、結構優しい感じの音楽をやってた。でも、「ちげーな、逆だな」と思って。

DJ MAMEZUKA:そうやな。普通にスルーしてしまうもんな。

sleeper:会場に入っていきなり、「うおーーー!!来たぜ!!りんご音楽祭!!!」みたいな、「入った瞬間フルスイング!!」な感じにしたかったんだよね。

DJ MAMEZUKA:ワクワク感あるよなぁ。

コロナ中も頑張っていたハコをみんなに知って欲しい「おせっかいな気持ち」

長崎:そんな「きのこステージ」を、今年はハコごとプロデュースしてもらうんですね。

sleeper:そうそう。23日は神宮前の「bar bonobo」、24日は渋谷の「翠月-MITSUKI-」。25日は、俺が沖縄でやってた「on」の後継の「Little ROCKERS」にやってもらう。

長崎:どうして今年はプロデュースをお願いしたんですか?

sleeper:
コロナ中、ハコが本当に大変な想いをしてきてるのをずっとみてて。2ヶ月に一回のパーティーでもしょっちゅう休みになったりとかね。やっぱり、「ハコ」が安定していることでやっと活躍の場があった人たちが、アンダーグラウンドにはすごく多いので。

長崎:なるほど……。

sleeper:例えば、渋谷の「翠月-MITSUKI-」が平日も含め若い子がパンパンに入っていたことって、あのへんにいない人には伝わってないんだよね。情報が遮断されたことによって、東京にもコミュニティができたんですよ。東京とか大きい街ってそんなにコミュニティ化しないというか、しっかり告知されて、一見さんのお客さんもいっぱいくる、みたいな感じだったのに。

長崎:東京でローカルに近いコミュニティができてる!?

sleeper:友達から回ってきた電話番号に電話するとドア開けてくれる、みたいなね。それなのに、中入ったらパンパンなの。その辺で遊んでた人はみんな知ってるけど、コロナ中もそんな風に頑張ってたところがあるってみんな知らない。

DJ MAMEZUKA:パーティーの原点ってそんな感じやもんね、ほんまに。

sleeper:そういうカルチャーを知ってもらいたくて。「りんご音楽祭」のお客さんは、ダンスミュージックとかクラブとかに興味はあるけど、しょっちゅういくタイプじゃない人が多いと思うんですよ。そういう人たちに、日本のトップランナーの「ハコ」がつなげてきたものを「音」で感じて欲しいなぁと思います。

長崎:sleeperさんって「りんご音楽祭」もやってて、「瓦レコード」って「ハコ」もやってて、かつ日本全国をパーティーで回っていて、全部やっている立場じゃないですか。だからこそわかるコロナ期間中の苦しさがあるんでしょうか。

sleeper:安定して運営するのがどんだけ大変かはもう……。ちなみに、コロナじゃなくても大変だからね! なのにコロナ中はほんとに大変で、その中でも新たにシーンを作った人たちはほんとにすごいと思う。やっぱりそれをみんなに知って欲しい。そういう「おせっかいな気持ち」がまた出てきて。

長崎:でた!スリーパーさんのおせっかいマインド!

「りんご音楽祭」を「往年のコンテンツ」にしたくない

sleeper:でもね、今年、いろんな人にプロデュースをお願いしてみて、俺が決められないことへの大変さはすごく感じてる。「全体とのバランスを取る」っていうのは俺以外判断できない。俺のディレクションのパーセンテージが減るっていうのはなかなか難しいなと思った。

長崎:なるほど。

sleeper:
全体のバランスで見たらこっちだけど、個でみた時にはこっちでいきたい、みたいなね。俺はこっちの方がいいと思うのになー、みたいなのが今年結構あって。でも、任せた人の判断を尊重したいから、「やってみよっかな」と思うよ。

DJ MAMEZUKA:今までも、「他の人に任せる」っていうのをやろうとしたやん。けど結局できてなかったやん。でも、今年は実際行動に移した。どうなるかはやってみなわからんけど、その段階まで来たってことやんな。

sleeper:俺はもともと、全然自分のことを信頼していないし、「自分すごい」とは思ったことがなくて。誰もやってないからやってるだけです、くらいの感覚なんだよね。あとは、こんなところで話すのもあれかもしれないけど、最近自分の衰えをすごく感じていて。

長崎:衰え?

sleeper:俺はいま39歳なんですけど、30代後半以降かな、年を取るにつれて、物理的に体力が落ちたな、って思う。あとは、うちの若いスタッフとかが「これめっちゃいい!」って言ってるのが、「え、これいいの?」って、もうわかんない時も増えてきたんだよね。物理的な衰えに加えて、精神的にも衰えてきちゃったのかな、って。

長崎:なるほど。「わからない」が増えてきたと。

sleeper:俺は、「りんご音楽祭」に限って言うとそれはよくないと思ってて。他のフェスとかでもスタッフが高齢になってくると、正直やってるコンテンツがどんどんつまんなくなってるなってよく感じてて。そうはなりたくない。往年のコンテンツって売りだったらいいと思うんだけど、うちは逆だから。常に新しいものを取り入れて行かなければいけないフェスだから。そういう中で、俺以外の人が「良い」って言ってることを、りんご音楽祭として「良い」ものとして表現していくことは、いつかやらなきゃいけないことなんだなってすごく思う。

長崎:難しすぎる問題……。

sleeper:例えばさ、ハコでやってて若い子にまるまるパーティー任せた時に、よくわかんない若い子たちがいっぱい楽しそうにDJやってて、めっちゃ盛り上がったりするわけよ。そういう面白みをもっと感じたい。

長崎:「任せる」ことで、自分では作れなかったものができる。

sleeper:自分がやったんじゃ絶対こうならないっていう面白さがある。「りんご音楽祭」はちょっと規模が大きいけど、「良い感じだなこの子たち、信用できるな」って若い子たちが良いと思うものを、「りんご音楽祭」として表現するのって面白いんじゃないかなって。

長崎:でもそれって、だいぶ大きな挑戦ですよね。

DJ MAMEZUKA:今年は長崎くんにポッドキャスト任せたり、広報任せてるのもそうよな、実際。

長崎:そうか、僕もその「任された」うちの一人ですね。こんな大役を任せていただいて……。

sleeper:
でもさ、これをやっていかないと、俺がよくても「りんご音楽祭」はつまんなくなっていくと思う。「りんご音楽祭」が年を取るってことなんだよね。俺も年取ってるから、俺にとっては多分おっけーなんだよ。

長崎:同じペースですもんね。

sleeper:「年老いたコンテンツ」にどんどんなっていくのは、「りんご音楽祭」のやりたいことではない。だから、挑戦せざるをえない。子供ができたり、生活のスタイルが変わったタイミングだし、それをすごく感じるね。例えば、20年後に俺の子供がオーガナイズしててもおもしろいなって思う。20年後までこんな生活してらんないよ! 今日だって移動続きで死にそうだもん。

DJ MAMEZUKA:それは体力無さすぎや(笑)

sleeper:俺、もともと体力ないから! 気力だけでやってる。

sleeper:俺が全国動き回ってることが「りんご音楽祭」の活力になってると思うんですよ。でも、俺ができなくなったら終わるんじゃ勿体無いなと思う。だから、そういう俺以外の活力も「りんご音楽祭」に昇華できたらもっと面白くなるんかな? っていうのを想像してる。わかんないよ、実際やってみたら全然面白くねーな、やーめた、ってなるかもしれないけど。

DJ MAMEZUKA:やってみないとね。

sleeper:
そう、やってみないと。

常にフレッシュな「りんご音楽祭」でいるためには、挑戦しなくなったら終わり

DJ MAMEZUKA:いやでもね、「任せる」のは勇気いるやんか。どうなるかわからへんし。実際今回それをやってるからさ。新たな挑戦やけど、今年の「りんご音楽祭」がどうなるのかすごい楽しみ。

sleeper:挑戦しなくなったら終わりですよ。ほんとに。特に、歳が離れた人に任せるっているのは難しいことなんだよね、ほんとに。「わからない」感覚を彼らは持っているから任せるんだけど、わからないからこそ、「これがいいです」って言われたことを、いいと思えない状況がいっぱい起きるわけ。だからこそ頼んでる価値があるんだけどね。

長崎:「わからない」から任せるけど、それが良いのか悪いのかわからない……。

sleeper:チーム組みとしてはすごく難しい。だから、あらゆる組織が若返りできないんだよね。でもそれはさ、ただつまんなくなるだけだから。全然良くないじゃん。でも、みんなそう思っていてもなかなか若返りできないんだよ。自分のわかんないこととどう向き合うかっていうのが今後の課題だと思う。

長崎:sleeperさんに「こっちの方がかっこいいですよ」ってちゃんと自信を持って言える若い世代が出てこないといけないわけですよね。

DJ MAMEZUKA:そしてそれを受け入れる器がないとね。

sleeper:一回り以上下の女の子のスタッフとかからはよく怒られてますよ俺。

長崎:(笑)

sleeper:でもこれは、幸せなことだなって思いますよ。だってさ、怒られないよ、大人になると。なんも言ってくれないよ普通。でさ、仕事終わった後にスタッフだけで「今日のオーナー最悪だったよね」って言い合うんだよ。直接なんて言ってくれない。めちゃめちゃ怒られてるもん俺、毎週。ありがたいよ。

長崎:たしかに「怒られるうちが花」なんていいますしね。そういう下からの声がちゃんと届くから、フレッシュでいられるんだ。

sleeper:常にフレッシュなりんご音楽祭でいるための努力をしている、ってことだよね。そしてMAMEZUKAさんはそれを横でずっと見てきてくれている。自分が「わからない」ものでも、若いスタッフが「これがいい!!」って決めたことを「りんご音楽祭」として表現して、それがお客さんにめっちゃウケてるところを見たいね。

DJ MAMEZUKA:実際に俺が最初に「りんご音楽祭」に誘われた時も、わからへんかったもん。sleeperは俺の下の世代やから、わからへんけど、なんかおもしろいことやってるって思った。

sleeper:「わからない」けど行ってみたのもすごいですよね。それはDJの先輩としてですか?

DJ MAMEZUKA:それはもう、sleeperがもってるものやからね。

sleeper:結局「人」だから、中身はあとから付いてくると思う。最初は経験値もないし、表現しきれないかもしれない。でも、いつか形になるから。すぐに結果が出ないよ。全然できてなくても、「こいつがやってることは面白そう」って、いつか良い感じになるかもなって思ってもらえればうれしいなと思う。

長崎:たしかに、「人」が大事ですね。

sleeper:ちょっとずつ形になっていくのを見られるのも楽しいよね。いままでの「りんご音楽祭」はほぼ100%のコンテンツを俺が作ってたけど、最終的には半分くらいにしたいなと思ってる。良くも悪くも、俺の偏った趣味を、みんなが面白がるっていうのがりんご音楽祭の遊び方として長年やってきたから、半分は残したいね。

DJ MAMEZUKA:そうやな(笑)

sleeper:よくわかんないけど、あいつが超いいって言ってるから行ってみよう!みたいな感じでりんご音楽祭は14年やってるから。一気にこれでさ、「俺やめます!後よろしく!」ってちょっとだけ意見を入れるのはたぶん面白くないと思うし。ひとまず三割くらいは「りんご音楽祭」を俺の手から話しても良いのかも。未来のためにね。俺がいなくなっても「りんご音楽祭」が続いた方が面白いから。いつ何が起こるかなんてわかんないしね。

長崎:根っこは変わらない、でも変わっていく「りんご音楽祭」。今年はどうなるのか楽しみですね。お二人共、今日はありがとうございました!

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